孫子に学ぶ、「乱は治に生じ、怯は勇に生じ、弱は彊に生ず。治乱は数なり。勇怯は勢なり。彊弱は形なり。」
(現代語訳)
軍が乱れるのは、整然と統制された状態から生じる。兵士が臆病になるのは、勇敢な心理状態から生じる。戦力の脆弱さは、強さに満足することから生じる。軍隊が治まるか乱れるかは、部隊の編成の技術に由来する。勇敢になるか臆病になるかは、軍隊に勢いがあるかどうかに由来する。軍の戦力が強いか弱いかは、軍隊の態勢に由来する。
(解説)
前段は逆説的である。乱れるのは統制から、臆病は勇敢から、そして脆弱は強さから。これらは組織が順調なときにこそ注意が必要ということを言っている。順調なときには何も変更しないことが多いが、組織の膿もたまっていってしまう。それが取り返しもつかない結果となりうる。順調なときこそ反省が必要だ。
また、数とは組織の編成、勢とは組織の勢い、そして形とは組織の態勢のことである。そのため前段と後段を組み合わせて考えれば、組織の編成を上手くやれば、組織は乱れず統制される。組織の勢いを上手くやれば兵士は臆病にならず勇敢になる。組織の態勢を上手くやれば軍の戦力を強くする、といえよう。
まず妥当な組織編制とはどのようなものか。正直、業務内容や規模によっても異なる。小規模の時代は、最初から最後まで一人でこなしても問題はないが、組織が大きくなれば、人の数も増え、一人のオペレーションに頼っていたら上手くいかなくなる。そのため、分業をしていくのだが、組織は業務内容ごとにチーム編成するか、業務をチームで分ける必要が出てくる。組織が大きくなれば同じ仕事をするチームに組織を分けた方が管理しやすい、情報共有をしやすいといったメリットがあるが、全体像を想像できない。対応力が下がる。といったデメリットが生じる。コミュニケーションが十分に取れ、効率的に分業することが第一だが、常に今の組織に最適な体制はこれでいいのかを見直す必要がある。
次に組織の勢いの付け方だが、チームの盛り上げ役がいると心強い。人一人の力によって、その組織に勢いが付いたり、つかなかったりする。いわゆるムードメーカーの存在だ。意気消沈してしまっても、危機的状況になっても、盛り上げ役の一言は心強い。
そして組織体制の見直しは、そのポイントは縦のラインと横の連携である。縦のラインは権限と責任を明確にすること、横の連携は役割を明確にすることである。縦のラインは、権限移譲と、定期的に報告する体制の整備である。そして横の連携は部門ありきではなく、会社に必要な業務から部門を考えること。次に内部牽制機能を整備することである。
[教訓]
〇組織が順調なときこそ注意せよ。
〇組織の勢いの付け方はムードメーカーの育成と配置。
〇組織の見直しは縦のラインと横の連携。縦のラインは権限と責任の明確化、横の連携は役割の明確化だ。