世界の歴史を題材とした起業家応援メディア

顧客のいい意味での裏切り方

孫子に学ぶ、「兵とは詭道なり。故に能にして之に不能を示し、用にして之に不要を示し、近くして之に遠きを示し、遠くして之に近きを示す。」

(現代語訳)

戦争は「偽りの方法」である。詭道とはこちらに十分な戦力があるにもかかわらず、敵にはそうでないように見せかける。自軍が敵の近くに展開しているが遠くにいるかのように見せたり、遠方に攻撃目標を定めるように見せて、近くを襲うかのように見せかける。

(解説)

これをまともに解釈すると、相手を騙すのが良いように聞こえてくる。不動産屋と銀行と不動産オーナーがグルになって、不動産オーナーの所得を作り変えて、オーバーローンで借りてしまう。それで返せなくなったら初めて騒ぎ立てる。食品偽装問題で賞味期限切れのものを期限を書き換えて販売したり、外国産なのに国内産として販売したりする。儲かるかどうかわからないのに、いかにも儲かるように見せかけて不動産や証券を販売する。この世には色々な騙しと、それに引っかかる人からお金をいかにむしろうかと企む業者が有象無象いる。しかし騙しはどこかでバレる。

ただ、ビジネスでも騙していいところがある。あの店には敵わないね、と思わせて、参入障壁を高くし、同じ業態では参入できなくしてしまうのは、一つの騙しと言えるのではないだろうか。つまり新規参入者の市場参入を諦めさせてしまうのである。こういった状況を競合の自縛といい。自縛とは参入しようとすればできるのに自発的に思いとどまる現象のことを言う。

もう一つは客に対する騙し、つまりサプライズだ。よくいい意味で裏切られたというが、そういう場合には裏切っていい。いわゆる期待以上だったということだ。期待以上の場合には顧客満足度が格段に上がる。例えば、リッツカールトンのサービスで、大阪で公演をした大学の教授が宿泊した部屋に翌日に使う東京公演の資料と老眼鏡を忘れてしまい、従業員が新幹線に乗って、東京駅でその先生に講演資料を渡したということがあった。正直採算度外視だ。この大学の教授が常連客になったことは想像に難くない。恐らく数回宿泊すれば新幹線代なんてすぐに回収できるだろう。期待以上のサービスを受けられれば、客は感動し、リピーターとなる。

つまりビジネスにおいては正道に沿った詭道のみが正しいと言えるのではないだろうか。

[教訓]

〇顧客をいい意味で期待を裏切れ。

〇ビジネスにおいては正道に則った詭道のみが正しい。

〇期待以上のサービスを行えば、客は感動し、リピーターになる。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
SNSでフォローする