兵は多きを益ありとするに非なり。惟だ武進すること無く、以て力を併せて、敵を料るに足らば、人を取らんのみ。
(現代語訳)
戦争は、兵士の数が多ければ多いほどよいというものではない。ただ猛進することなく、味方の戦力を集中し、敵の力量を把握できれば、敵を攻め取ることができる。
(解説)
少ない兵力で大きな兵力を打ち破ったことは歴史上少なくない。日本でも以下の戦いがある。日本三大奇襲と呼ばれている。
北条氏康8,000人 対 上杉憲政、上杉朝定、古川公方80,000人
北条勢の勝利、上杉朝定の討死、古河公方の北条家への降伏・周辺大名の弱体化
毛利元就4,000~5,000人 対 陶晴賢20,000~30,000人
結果 : 毛利勢の勝利、陶晴賢の討死・大内氏の弱体化
織田信長 3,000~5,000人 対 今川義元 25,000~45,000人
結果 : 織田信長の勝利、今川義元の討死・今川氏の弱体化
これ以外にもあるのだが、孫子も言う通り、兵力で勝っているからと言って、それだけで勝利に結びついているわけではなく、数が多いという理由だけで攻撃を仕掛ければ、逆に足をすくわれることもある。当然、的確な敵情判断を行うことで敵に勝る圧倒的な兵力を集中すれば、勝てるということも言っている。
これらは現代社会にも当てはまる。まともにぶつかれば大企業と中小企業であれば、物的資源や人的資源、資本力に勝る大企業に叶うわけがないが、戦うフィールドを若干ずらす、大企業では収益性の取りづらいニッチ市場を目指す、あるいは大企業の人員では経験が乏しそうな分野を狙う等、戦いようはある。そして勝てる方法があるのだ。
数で負けているからと言って、戦わない方がもったいない。確実に蒔けると決まったわけではないのだから。
[教訓]
〇数字だけでは勝ち負けを判断できない。
〇数が多いから絶対に勝てるわけでもなく、数が少ないから絶対に負けるわけではない。
〇数が少なくても質が高いかもしれない。戦略が優れているかもしれない。数の大小だけであきらめてはならない。