それ愚をもって智に克つは、逆なり。智をもって愚に克つは、順なり。智をもって智に克つは、機なり。その道に三あり。一に曰く、事。二に曰く、勢。三に曰く、情。事機作りて応ずる能わざるは、智にあらざるなり。勢機動きて制する能わざるは、賢に在らざる也。上記発して行う能わざるは、勇に在らざる也。よく将たる者は、必ず機に因りて勝ちを立つ。
(現代語訳)
愚者が智者に勝つのは逆だ。智者が愚者に勝つのが当たり前だ。そして智者が智者に勝つのが変化である。変化には次の3つがある。
(1) 事機:事態の変化
(2) 勢機:態勢の変化
(3) 情機:情勢の変化
事機が有利に展開しているのに、それを生かさないのは智者ではない。
勢機が有利に展開しているのに、それに乗じないのは賢者ではない。
情機が有利に展開しているのに、動かないのは勇者ではない。
優れた将軍は、必ず機に乗じて勝利を収める。
(解説)
物事は変化の時にチャンスがある。変化のないときにはチャンスが訪れない。いつもと異なったことが起きる時にチャンスがある。
外的要因の変化には、産業構造の変化がある。固定電話から携帯電話、そしてスマートフォンに変わったときに、多くの新しいビジネスが生まれた。当然、固定電話から携帯電話やスマートフォンを作り出した企業は、内部要因の変化だったであろう。自分たちで変化を生み出したのだ。PCの個人への普及やインターネットの登場がビジネス環境を激変させたことも我々の記憶に新しい。
人口構造の変化もビジネスチャンスになりうる。日本は人口が減少していてお先真っ暗と思いがちだが、高齢化社会が進むにつれて、人には別のニーズが生まれてくる。人口の増減、年齢構成、雇用、教育水準、所得の変化等、何か変わる前に新しいサービスを考え出せば、そこにチャンスが生まれる。
以前、ダイエーの創設者中内功氏は「変化こそ、機会の母である」といった。また、コンビニの育ての親でありセブンアンドアイホールディングスの名誉顧問鈴木敏文氏は「世の中の変化、お客様のニーズの変化こそが最大の競争相手なのです」とも言っている。成功者は変化にこそビジネスチャンスの匂いを嗅いでいたのである。
変化は内部者にとっては脅威に思われがちだが、外部者にとっては機会に映る。そうであれば内部者も外部者としての客観的な目で、自社を見つめ、変化に対応していけば、同じように機会となるであろう。
[教訓]
〇変化こそビジネスチャンス。