それ三軍の行、探候審ならずして烽火度を失う。期に後れ令を犯して時機に応ぜず、師徒を阻乱す。たちまち前したちまち後れて、金鼓に合わず。上、下を恤まず、削斂すること度なし。私を営ち己に徇いて、饑寒を恤まず。妖辞を非言し、妄りに禍福を陳ぶ。事なくして喧雑し、将吏を驚惑す。勇にして制を受けず、専にして上そ陵ぐ。府庫を侵竭し、擅にその身に給するあり。この九者は、三軍の蠧となり。これあれば必ず敗る。
(現代語訳)
軍は次の状況に陥ったとき、必ず敗れる。
- 敵情探索が不十分で、情報連絡が的確性を欠いている。
- 部隊が命令に違反したり、終結の時刻に後れたりしてタイミングよく行動せず、作戦行動に齟齬をきたす。
- 兵卒の動きがバラバラで号令に従って整然と行動することができない。
- 将帥が部下をいたわらず、やたらに酷使する。
- 将帥が私利私欲に走り、兵卒が飢えに泣き、寒さに苦しんでいても、意に返さない。
- 部隊に神がかりな言辞が横行し、軽々しく占師まがいの言葉を口にする者がいる。
- 兵卒が理由もなく騒ぎまくり、幹部将校の判断を混乱させる。
- 部下が血気の勇に流行って上官の命令を無視し、独断専行する。
- 勝手に軍資金を横領して私腹を肥やす者がいる。
以上のような状況に陥れば、軍は解体の危機にさらされ、闘えば必ず敗れる。
(解説)
以下のような状況になったら会社はつぶれる。
- マーケット調査が不十分で、顧客ニーズをとらえておらず。加えてマーケティングチームと商品開発チームのコミュニケーションがうまくとれていない。
- スタッフが命令違反を犯し、遅刻常習犯が多く、それを取り締まり切れない。
- スタッフの意思統一が図れず、集団行動がとれない。
- リーダーが部下をいたわらず酷使する。土日祝日休みなし。普段も終電で帰れない。
- 経営者が役員報酬を多くもらって、スタッフに対する支払いが少ない。あるいは給料未払が発生している。役員自らももらっていないが、生活費は自分で何とかしろ、ここで要求しないのが忠臣だという雰囲気になっている。
- 私たちは選ばれています、国に守られています、なんていう妄言を社長自ら言い出す。
- スタッフが騒ぎ、上の意思決定がしづらい状況になっている。
- 部下が独断専行して、上の命令を聞かなくなっている場合。
- 誰か会社のカネを横領している奴がいる場合。
[教訓]
〇上司と部下の気持ちがバラバラになったら、もはや会社としては終わりだ。気持ちを等しくするためには、困難を一緒に分かち合う。特に社長はスタッフを含めた関係者の生活費を確保し、保証することはしなければならない。