それ将たる者には、必ず腹心、耳目、爪牙あり。腹心なきものは、人の夜行するが如くにして、手足を措くところなし。耳目なき者は、冥然と居るがごとくにして、運動を知らず、爪牙なき者は、饑人の毒物を食らうがごとくにして、死せざるなし。故によく将たる者は、必ず博聞にして多智なる者を腹心とし、沈審にして謹蜜なる者を耳目とし、勇悍にしてよく適する者を爪牙とす。
(現代語訳)
将軍は、腹心、耳目、爪牙を持たなければならない。
腹心がなければ、暗い夜道を手探りで歩くようなもので、思い切った行動がとれない。
耳目がなければ、暗闇の中に座っているようなもので、体を動かすことすらできない。
爪牙がなければ、餓死寸前の人間が毒物に手を出すようなもので、身の破滅を招くことになる。
さて、それぞれ腹心、耳目、爪牙にするにはどのような人物が適しているのだろうか。
腹心には、広く学問に通じ、知能の優れた人物を選ぶこと。
耳目には、沈着冷静にして口の堅い人物を選ぶこと。
爪牙には、勇猛果敢にして敵を恐れぬ人物を選ぶこと。
(解説)
腹心とは心の底から信頼できるパートナーや部下の事だ。意思決定をする際に、自分の考え方で良いかどうかを聞く相手であり、自分が悩んでいるときに相談に乗ってくれる相手である。創業時のパートナーはこういう存在でなければならないだろう。そのため、幅広い知識や経験を有し、単にテスト勉強ができるだけでなく、知能レベルの高い、自分で考えられる能力のある人物であるべきだ。
耳目とはリーダーの目や耳となって、仕事を助ける人物のことだ。外部に対してはマーケッター(マーケティング調査を行う人物)であり、社内ではスタッフの不平や不満等を聞きながら、上手く調整してくれる人物の事だ。社内の機密情報を扱うこともあるし、感情に流されるような情報収集をする人物で困る。沈着冷静かつ口の堅い人物でなければならない。
爪牙とはリーダーの手足となって働く家臣のことだ。自分の代わりに、自分の意思を理解して忠実に動いてくれる人であって、特別な役職ではなさそうだが、上記文言からすると営業パースンのようにも見える。つまり営業だからと顧客相手にビビらない人物の事である。
[教訓]
〇信頼できるパートナーや部下(腹心)を持て。
〇情報を客観的に収集するパートナーや部下(耳目)を持て。
〇リーダーの手足となってがむしゃらに働くパートナーや部下(爪牙)を持て。