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備えあれば患いなし

それ国の大務は、戒備よりも先成るはなし。もしそれこれ失うこと毫釐なれば、差千里に若く。軍を覆し将を殺すも、勢いよいよ息まず。懼れざすべけんや。故に患難あれば、君臣旰食してこれを謀り、賢を択びてこれに任ず。すなわち居安んじて危を思わず、寇至も懼れを知らざるは、これ燕、幕に巣い、魚、鼎に游ぶと謂うが如し。滅びること夕を俟たず。伝に曰く、「備えずして虞れざるは、もって師するべからず」。また曰く、「予め備えて虞なきは、古の善政なり」。また曰く、「蜂蠆なお毒あり、いわんや国においてをや」。備え泣きは、衆しといえども恃むべからず。故に曰く、備えあれば患いなし、と。故に三軍の行、備えなかるべからず。

(現代語訳)
国家にとっての最大の急務は国防である。たとえ少しでも国防に手抜かりがあれば、取り返しのつかない事態を招くことが確実である。敵の攻撃の前に大敗し、国土の蹂躙を許すことになる。だから困難に直面すれば、君臣ともに寝食を忘れて対策を協議し、有能な人物を選んで将軍に任命する。もし当面の平和になれて将来の危難に備えることを怠って、敵の攻撃にさらされても、暢気に構えていれば、ちょうど燕が幕に巣くって、魚が鼎の中で遊んでいるような危ない状況に陥り、滅亡も遠くない。また、『左伝』によると「備えがないうちは戦ってはいけない。」「盤石の備えを高めるのが古くからの善政である。」「蜂やサソリのような虫でも毒を持っている。ましてや国は普段から備えておかなければならない。」まさに「備えあれば患いなし」なのである。行動を起こすにあたってはくれぐれも備えを怠ってはならない。

(解説)
企業にとっての備えとは、やはり現預金である。現預金さえあれば、競合相手からの攻勢があっても、何かトラブルがあっても当面耐えしのげる。現預金も月に使うキャッシュの3か月分程度は持っておきたいところ(業種や売掛金の回収スパンによっては変わる)。

会社に利益が出ていることを前提として、保有現預金が3か月分を切るくらいになったら、運転資金の融資を検討しておきたい。そうはいっても、創業後に借りるとなれば、通常はキャッシュハングリーな状況にあるだろうから、つまり売り上げが最初から順調ではなく、徐々に損益分岐点に到達するため、最初は現預金が目減りしていくはずだから、創業前に余力を持って借りておきたいものだ。

[教訓]
〇企業にとっての備えは現預金、目安として支出の3か月分位を持っておきたい。
〇創業後よりも創業前の方が借りやすい。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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