兵は凶器にして将は危任なり。ここをもって器剛なればかけ、任重ければ危うし。故に善く将たる者は、彊を恃まず、勢を怙まず、これを寵するも喜ばず、これを恥ずかしむるも懼れず、利を観て貪ならず、美を見て淫せず、身をもって国に殉ず、一意のみ。
(現代語訳)
軍隊は凶器だ。頼りすぎれば失敗する。将軍は困難な役割を担っている。慎重に対処しなければ身の破滅を招く。そのため、優れた将軍は、自分の率いる軍がいかに精強であっても、それだけを頼りにせず、勢いだけを頼りにすることもない、また君主から信任されてもその威光を笠に着ず、敵から辱めを受けても、恐れない。利益で誘われても見向きをせず、美人、美酒、美食を示されてもおぼれない。優れた将軍は、国に報いることだけを行う。
(解説)
優れたリーダーは国に報いることだけを行う。これは小さなエリアでもいいし、本当に日本国でもいいし、あるいは世界でもいいのだが、顧客(とスタッフ)に報いることだけを行うと解釈すべきことだ。
会社自体が凶器になるとは、イメージも湧かないかもしれないが、日本でも高度経済成長期の初期段階では、水俣病やイタイイタイ病等企業初の公害がもたらされた。今でも苦しめられている人がいるが、これは会社が凶器であった例だろう。企業の利益の下に全てが正当化されてしまった。現代ではむしろ近隣の大国からPM2.5なる公害が飛来する。公害は国境を越えてやってくる。
リーダーたる者は、商品力や会社の組織力、そして今の勢い(流行)だけに依存しない。顧客から賞賛されても、いい気になることもない。一時期客が増えてしまうと、成功したと勘違いして、ついつい自分のための出費が増えてしまったりもする。しかし事業の成功など一抹のバブルだと心得た方がいい。どれだけの経営者が、一度上手く行ったという過去の栄光にしがみついて、他人を不幸に巻き込んでいるか知れない。中には今はどこで何をやっているのかがわからず、音信不通なんて人もいる。
目の前に利益が転がっていたら、ありがたくは戴いておくのはよいが、深追いしてはならない。人間色には弱い。そこでついついそちらの出費を重ねてしまうと、えらい目にある。美男美女・美酒や美食はほどほどのたしなみとせよ。必ずや身を亡ぼす。
[教訓]
〇優れたリーダーは顧客とスタッフに報いよ。自分には報いなくていい。それ以外では事業に報いよ。